株式会社清涼社
- 支援内容:
- 売上・販路拡大
- 業種:
- 医療,福祉
- 代表者名
- 菊地 嘉通
- 住所
- 〒350-1142 埼玉県川越市大字藤間79番地14

他機関との連携で開業直後の危機を突破!精神医療の新たな道を切り拓く
地域の幸せを願いスタート 開業直後に資金繰りが悪化
清涼社は精神科に重点を置く訪問看護ステーション。困難を抱えながら地域で生活する人々が、夢や希望を持って生活できるような訪問看護を目指し、令和元年6月に開設した。
同社の菊地代表は、精神疾患患者を対象とした病院に長年勤務していた。心理学を学んだ経験もあり、一貫したフィロソフィーを持つ、知識が豊富なプロフェッショナルである。
民間銀行から高金利の融資を受け事業をスタートしたものの、開業当初は患者が集まらなかった。保険診療による入金遅れもあり、すぐに資金繰りに困窮。看護の専門家であったが経営面の経験や知識がなく、菊地代表はどうしたらいいものかと途方に暮れていた。偶然そんな時に、ウェスタ川越で目にした「埼玉よろず支援拠点」のチラシ。設立間もない令和元年9月に1回目の相談が持ち込まれた。

資金調達から人事制度まで
支援機関とも連携しスピーディに解決
開業直後の最初の相談から現在まで、各フェーズに応じた支援が行われた。
1回目の支援時、コーディネーターは菊地代表と共に創業・ベンチャー支援センター埼玉を訪れ専門家に相談。前例が少ないソーシャルビジネスのため融資を受けられるか不透明であったが、創業・ベンチャー支援センター埼玉との協調支援により社会的なニーズが認められ、2つの金融機関(青梅信用金庫、日本政策金融公庫)からソーシャルビジネス支援資金の調達に結び付けることができた。融資が実現するまでの3か月間、コーディネーターは清涼社の理念や事業方針を聞き取って申請書類の作成支援をするなど、密にサポートを行った。
「初めて相談に伺った時の『この事業を進めたほうがいいです』というコーディネーターの言葉は、当時不安に押しつぶされそうになっていた私を支えてくれました」と菊地代表は振り返る。
2回目の相談は令和4年12月、高金利の融資の借換えをしたいとのこと。この時点で相談者は3年連続の債務超過であったが、売り上げは伸びており、黒字転換していた。この時は、銀行に提出する財務診断報告書と借入返済計画書の作成支援を行い、融資の借換えにつなげた。
令和6年4月に3回目の相談。経営が安定し財務上の問題は解消され、スタッフが11名まで増加している状況だった。従業員の給与やマネジメント、人事制度についての相談を受け、目標管理シートのサンプルを配布、能力の見える化・成長記録を見える化など、育成の制度について助言を行った。今後の課題として、自己評価や面談のルーチン化、リーダー育成制度の策定をアドバイスもした。
初期は主に書類作成や融資のサポート行い、現在は人事関連の相談に乗っている。コーディネーターは同社の希望を聞き取り、具体的な事例の共有やツールの紹介を通じて目指す方向へ進むように背中を押す。
「患者、治療をする病院、社会的な支援をする行政からの信頼を得られ、今、地域密着型の精神疾患訪問看護を行えるのは、コーディネーターのおかげです」と菊地代表は話す。

思いに寄り添う伴走型支援 精神医療の流れを捉え急成長
開業時の資金難を乗り越え、現在は黒字に転換。事業は順調に拡大しており、利用者数(厚生局に届出)は令和2年6月:23人、令和3年6月:45人、令和4年6月:74人、令和5年6月:102人、直近の令和6年6月:123人と急増。売上も拡大し、創業当時と比較し10倍近くまで増加している。
支援の時に重要なのは、相談者の思いや目指すことを聞き取り、望んでいる方向に背中を押すこと。相談者自身がやりたいことに気づいていない場合はコーディネーターが一緒に見つける。本に書いてあることを押し付けてもうまくいかない。コーディネーターは、自身が関わった相談経験をもとに事例を伝えたり、役に立つツールを紹介し、一緒に考えながら地道に伴走支援をする。
「医療者である前に、地域で生活する生活者の視点での関わりが重要」と考え訪問看護を行う同社。「精神疾患を人間の一つの成長過程と捉える」をモットーに、地域の精神科医療に全身全霊を捧げる。菊地代表は長年勤務していた病院との太いパイプもあり、病院の医師や同業者とのネットワークは非常によく機能している。訪問看護の枠を超えた様々なサポートにより、患者の現実的な不安が軽減し、病状が安定するという良い循環が生まれている。
精神医療の大きな変化として、精神病院での長期入院から、地域で療養する方向へ国の方針がシフトしている。菊地代表はこの流れを捉え、需要を掘り起こし事業として確立した。訪問看護を求める精神疾患患者は多く、今後もその需要は増え続けることが見込まれる。

